プログラミングなしで簡易なコマンドを用いてBLE通信をすることが可能なモジュールがSilicon Labs社からWireless Xpress BGX13シリーズとして2018年から提供されていました。しかしながら先日、2022年8月に生産完了予定(生産終了は2023年3月予定)が発表されました。
BGX13シリーズは発売から4年程度経過しており、生産完了もやむを得ずという状況ですが、BGX13シリーズの上位として発売されたBGX220シリーズは2021年に発表されてから1年ほどでBGX13シリーズと一緒に生産終了となりました。WiFiモジュールでも生産完了になっており、方針変更で無線系のXpressシリーズから撤退となったようです。上位版のBGX220シリーズも生産完了となり、後継機種も販売されないことから既存のユーザに対する影響を考慮し、BGXシリーズについてはLaird社からLyraシリーズとしてBGXシリーズと同じハードウェアとXpressファームウェアが提供されることが分かりました。今回はBGXシリーズとLyraシリーズの違いについて調査した結果(アンテナ内蔵Pシリーズを対象)を紹介したいと思います。
BGXシリーズとLyraシリーズの違いについてはLyraシリーズの公式サイトにBluetooth Xpress (BGX) Migration Guideとして公開されています。詳細はそちらを参考にしてください。
■ハードウェア
ハードウェアとしてフットプリントは同じため、そのまま同じフットプリントとして利用できます。一方、ピンアサインはBGXシリーズとLyraシリーズで互換性がありません。LyraシリーズのピンアサインはBGX220に合わせたようで、BOOTピンが異なります。BGX13とはBOOTピンの他、電源やUARTのピンも異なります。
電源電圧については1.8V~3.3Vとなっており、最低2.4VのBGX13よりもより低電圧で動作できる仕様となっています。
■ソフトウェア
ソフトウェアについては互換性有ということのようです。ただ、BGXシリーズでは出荷時から既にXpressファームウェアが書き込まれた状態でしたが、Lyraシリーズは出荷時にXpressファームウェアは書き込まれておらず、ユーザ側で公開されているXpressファームウェアを書き込む必要があります。
ファームウェアはBOOTピンをGNDにした状態で電源投入させることでUARTから書き込むことが可能です。Github上でWindowsのコマンドラインからシリアルUARTを介してファームを書き込むための書き込みツールuart_dfu.exeが公開されています。uart_dfu.exeはUART-DFU_XXX-XXXXX.zipとして圧縮ファイルとして提供されています。
コマンドライン上から例えば下記のようにコマンドを実行するとファーム書き込みが可能です。
uart_dfu.exe COM8 115200 LYRA-P_Bluetooth_Xpress_UART.gbl
実際にファーム書き込みした際に分かった点として、書き込みツールuart_dfu.exeはUSBシリアル変換のGND, TX, RXの他にCTS、RTSの配線も必要な点です。通常のマイコンとの通信等ではGND, TX, RXだけでも十分ですが、uart_dfu.exeの書き込みツールはCTS、RTSの信号変化も確認しているようで手持ちのGND, TX, RXだけのUSBシリアル変換アダプタでは動作しませんでした。GND, TX, RXの他にCTS、RTS端子も備えた別のUSBシリアル変換アダプタを使用するとすんなり書き込むことができました。
Wireless XpressシリーズはUARTシリアルで設定変更できるため、プロトコル実装なしでマイコン側のファーム書き換えのみで様々な機能を実現できるというのは非常に魅力的です。BGXシリーズは生産完了になったものの、Laird社からLyraシリーズとして今後もある程度入手できるようで安心しました。