2022年06月11日

ミニホットプレートMHP30

今回は先日、Aliexpressで購入したミニホットプレートMHP30を紹介したいと思います。これまで簡単な電子工作基板の実装はヒートガンを用いてリフローしていましたが、部品によってはヒートガンの風によって途中で飛んでしまったりと作業しづらい点がありました。一方で専用の温度制御されたホットプレートを買うのは保管場所も要するため、導入を悩んでました。

そこでMakersの中でも話題のミニホットプレートMHP30を購入してみました。プレートサイズとしては30mmx30mmで非常に小さいものの、ちょっとした基板のリフローであれば、十分だと思いました。


mhp30-1.jpeg

PD65W以上の出力に対応したUSB-ACアダプタを電源として動作します。



mhp30-2.jpeg

背面のAのボタンを長押しで加熱スタート、Bボタン長押しで加熱ストップとなります。また、A、Bボタンを短く押すことで温度調整等が可能です。


mhp30-3.jpeg

実際に電子基板の部品実装をしたところ、きれいにQFN部品の実装ができました。


実際に使ってみて驚いたことは単なるホットプレートというよりもUSBガジェットの延長線として完成した製品だと感じました。具体的には下記の通りです。

・USBPDで60W(20V3A)の電源供給
・ヒータ温度をLEDで表示
・USBをPCに接続でUSBドライブとして認識
・USBドライブからファームウェアアップデートや設定ファイルの書き換えが可能
・本体が倒れるとヒーターOFF&アラーム通知


plate2.jpg

USBをPCに接続した場合はPDではないため、加熱ONすると「Low Voltage」のエラーで加熱できないものの、PCからUSBドライブとして認識することでファームアップデートや設定ファイルの書き換えができるのは驚きました。

MHP30は非常に小さく、場所を取らないため、便利だと思いました。本体が小さいため、USBケーブルに引っ張られて机から落ちたりしないように気を付ける必要があると思いました。付属のUSBケーブルは非常に柔らかいため、それを使った方が引っ張られずによいと思います。また、ヒータONから数百秒程度で指定の温度になりますが、逆にヒータOFFして温度が室温程度に下がるまではそれ以上に時間を要するため、付属のシリコンカバー等を付ける等して触れた際にも火傷しないように注意が必要です。今後、MHP30を色々活用してみたいと思います。
posted by Crescent at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | モノづくり | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年05月07日

PIC32 C++プロジェクト

今回はPIC32マイコンでC++ (CPP) プロジェクトを作成する方法について紹介します。といっても記事にする程でないほど簡単でした。

STM32マイコンのSW4STM32やCubeIDEではC++プロジェクトへの変換作業等が必要でしたが、MPLAB X(v5.45) + XC32(v2.50) +Harmony3では特に変換作業等必要なく、cppファイルと.hppファイルを追加するだけでした。また、ライブラリやプロジェクト、コンパイラ等はC++に対応済のため、追加設定は不要です。そのため、非常に簡単に実装できます。

追加するcppファイルと.hppファイルとして、ラッパーとなるwrapper.cpp、wrapper.hpp、LED点滅用の関数LedBlink.cpp、LedBlink.hppをプロジェクトに追加します。また、app.cからラッパー関数を呼び出すためのcpploop();を追加しました。各ファイルの詳細についてはこちらにアップロードしたため、割愛します。

通常のプロジェクト同様にLedBlink.cpp内でブレイクポイントを置いてデバッグもできました。

PIC32CPP.JPG

思った以上にすんなりC++ (CPP) プロジェクトを動かすことができたため、今後はパワフルなPIC32マイコンを活かして、機械学習系のライブラリ等にも応用してみたいと思います。
posted by Crescent at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 組込ソフト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年04月23日

USBカメラ変換基板

 今回は昨年から試行錯誤しながら取り組んでいるプロジェクト(USBカメラ変換基板プロジェクト)について紹介します。組込系でカメラ機能を利用する場合、昨今ではOpenMVやM5Camera、ESP32-Cam等を利用することが多いと思います。マイコンとカメラを接続する場合、一般的に下記の接続方法があります。


接続方法メリットデメリット製品例
SPI
伝送が高速
ローエンドマイコン対応
機種によってコマンド互換なし
低解像度
Arducam等
UART
省配線
コマンド互換少し有
ローエンドマイコン対応
伝送が低速
低解像度
シリアルカメラ等
NTSC+SPI
伝送が高速
汎用NTSCカメラ対応
NTSCカメラ自体の入手性
バッファメモリ必須
解像度固定
TVP5150等でSPI変換
パラレル
伝送が高速
高解像度
配線が多い
ハイエンドマイコンのみ対応
カメラモジュール等
MIPI
伝送が超高速
高解像度
専用IF必須
ハイエンドマイコンのみ対応
HDMI
伝送が超高速
高解像度
変換IC必須
ハイエンドマイコンのみ対応
TFP401等で変換
カメラユニット
低コスト
筐体ケース付きがある
別途ファーム書き込み必要
OpenMV
M5Camera
ESP32-Cam
HuskyLens
USBカメラ
USB汎用接続
ケーブル延長容易
入手性が良い
UVCホストの実装が複雑
USB1.1では動作しないカメラ有
解像度の制約が多い
Logicool C270、C920等


 SPI接続やUART接続の場合、予めバッファがカメラ側に内蔵されていることが多いため、マイコン側に大容量メモリがなくても最低限の処理が可能です。一方、パラレル接続やMIPI接続の場合はイメージセンサからほぼそのまま出力されるため、それに対応した高速なインタフェースと読み出しデータを保持するための大容量メモリが必須となります。ユニットとして販売されているものは公開されているファームを書き込むだけで簡単に動作確認や実装できるために便利ですが、生産終了やロットによる機能差等が生じる場合が多々あります。多くのカメラモジュールで使用されるイメージセンサは主にスマートフォン向けのため、カメラモジュールの生産終了や型式変更等が頻繁で継続した安定入手に難があります。

 上記の方法の中でUSBカメラやNTSCカメラを使用する場合、汎用的なIFで継続して安定入手が可能です。ただ、そのままでは容易に使うことが難しいのが課題です。そのため、単体や小規模のマイコンでも簡単に処理できるUSBカメラ変換基板を開発することにしました。
コンセプトは下記の通りです。

・汎用的なUSBカメラから画像取得(jpeg、bmp対応)
・単体でSDカード等に画像ファイルを保存
・簡易的なタイムラプス撮影ができる
・UARTやSPIを介した低解像度の画像取得


実際に開発したUSBカメラ変換基板です。

img1.JPG


もともとはSTM32マイコンで実装予定でしたが、HALライブラリではIsochronous転送に失敗してうまく転送できない、昨今の半導体不足で入手困難であるため、断念。FTDIのVinculumではRTOSのオーバーヘッドが無視できず、SPIの転送速度が遅すぎて断念しました。最終的にPIC32MZマイコンを用いて実装しました。PIC32MZはUSB2.0 High Speedに対応しているため、多くのUSBカメラに対応できます。

SPIを介してLCDを接続してBMPデータを描画させてみました。

img6.gif

カメラや設定によって異なりますが、1秒間に10フレーム弱程度で比較的スムーズにLCDに表示させることができました。


img7.gif

また、10秒間隔でのタイムラプス撮影をして後からコマ送りで動画に編集してみました。今後はサンプルコードや利便性の向上、対応カメラの追加、機能追加等を検討したいと思います。随時こちらに更新情報を追加したいと思います。
posted by Crescent at 00:00| Comment(0) | 電子部品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年04月09日

MachXO3LF/L Starter Kit UART設定

MachXO3LF/L Starter KitはLattite社のFPGA、MachXO3シリーズの評価ボードです。FTDIのUSBシリアル変換ICが搭載されているため、Diamond Programmer等から書き込み治具なしでそのまま書き込んで動作確認できます。

特にMachXOシリーズは外部FlashなしでFPGA単体で動作可能なため、小規模な開発に便利です。MachXO3LFとMachXO3Lで2種類ありますが、何度も書き換えて使用する可能性がある場合はFlashベースのMachXO3LFとなります。MachXO3LF/L Starter KitはFTDIの2232Hを搭載しています。2232Hは1つのICにシリアル機能をデバイスAとデバイスBで2つ搭載しています。デバイスAはJTAG書き込み用(245FIFOモード)、デバイスBはUARTやI2C等のユーザ用途に設定可能になっています。一方でデフォルトではデバイスBが初期設定(245FIFOモード)となっており、UART等の用途で使用できません。今回はMachXO3LF/L Starter KitでFTDIのUARTを使用する設定について紹介します。


@ハードウェア設定
MachXO3LF/L Starter KitのデフォルトではFTDIのデバイスBとMachXO3が接続されていません。FTDIチップ横のR14(FTDI:TX-FPGA:RX)、R15(FTDI:RX-FPGA:TX)に抵抗(0~100Ω程度)を取り付ける必要があります。写真ではハンダでジャンパさせました。


uart1.jpg



AFTDI EEPROM設定
デバイスBが初期設定(245FIFOモード)となっており、UARTモードに切り替える必要があります。FTDIチップの横にEEPROMが接続されており、そこにFTDIチップの挙動を決定するパラメータが書き込まれています。パラメータを書き換えることでデバイスBをUARTとして動作させます。ここで注意点としてEEPROMのパラメータの書き換えに失敗した場合、Diamond Programmer等からJTAG治具として検出できなくなる可能性があるため、注意してください。

こちらのリンクからEEPROMのパラメータ書き換えのソフトウェアFT_Progをダウンロードします。ソフトウェアを起動し、F5キーを押して、ワーニングメッセージが表示されてOKを押すと、現在の情報が表示されます。

uart5.jpg

uart2.jpg

他にもFTDIデバイスが接続されている場合、誤って他のデバイスに書き込んでしまう可能性があるため、MachXO3LF/L Starter Kit以外のデバイスを外して、ツリー表示のデバイスが1つであることを確認してください。

Hardware Specificをクリックし、PortBのHardware設定をRS232 UARTに設定します。PortAはJTAG用の設定となっているため、間違えてPortAの設定を変更しないように注意します。

uart3.jpg

同様にDriverの項目をVirtual COM Portを選択します。

uart4.jpg

上記の設定で書き込みボタンを押します。USBを抜き差しするとCOMポートとして認識できるようになります。

なお、デバイスマネージャーから「表示をコンテナ別」に設定して、そこからVCP(Virtual COM Port)に設定変更できるチェックボックスがありましたが、こちらの設定だけではCOMポートが追加されるものの、UARTとして動作しませんでした。やはり、FT_Progを用いてパラメータの書き換えが必要なようです。

ftdi1.jpg

ftdi2.jpg


上記の手順後、C11にTX、A11にRXとしてユーザプログラムを書き込むことでMachXO3LF/L Starter Kit単体でPCとUART通信できるようになりました。R14、R15がデフォルトで未実装に気づかず、デバッグに時間を要してしまいました。Starter KitのPDF等にもUART通信を使用する手順について説明の記載がなく、ちょっと不親切だと思いましたが、なんとかPCとUART通信できるようになりました。

posted by Crescent at 00:00| Comment(0) | 電子部品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年03月26日

音方位センサ

 ー昨年から断続的に開発してきた音方位センサがやっと形になってきたため、紹介したいと思います。音方位センサは直径4cmの円形基板に4つのMEMSマイクを搭載したセンサで音源の方位を音の時間差から計算してLED及びI2C、UARTで結果を出力する基板です。主な用途として小型の首振りロボットの頭に搭載することで声で頭の向きを変えたり、声でカメラの向きを変更して撮影するといった用途を想定しています。

 基板自体の開発は20年12月に完了していたものの、ファームウェアのアルゴリズムが安定せず、リリースできずにいました。断続的にアルゴリズムの検討、処理の見直しを実施し、最終的にGCC-PHAT(Generalized Cross-Correlation. PHAse Transform)方式である程度、安定して方向検知できるようになりました。GCC-PHATの原理の詳細については多くの論文や資料があるため、こちらでは述べませんが、音の方位を検出する原理として、少し離れたマイクから同時に音をサンプリングすることで、マイク同士の距離の差によって音が到達する時間差から方位を検出します。180度片側の場合、2つのマイクで角度を検出できますが、前方か後方か分かりません。平面の場合、3つ以上あれば360度の方位を検出できます。本センサは1つ冗長ですが、マイクを4つ搭載しています。

ssl_algo.jpg


 まず、ハードウェアの構成として、どのような種類のマイクを使用するかという問題があります。基板の実装密度を高め、より高感度、音の感度が周波数によらずフラットなMEMSマイクを採用しました。MEMSマイクの中でもアナログマイクとデジタルマイク(PDM)のどちらにするかについては、アナログの場合、外付けでアンプが必須で環境によって増幅率が変更な必要な場合があります。デジタルの場合は外付けのアンプが不要な代わりにソフトウェアで処理が必須となります。部品数を減らし、環境にロバストなデジタルMEMSマイクを選定しました。

 微小な音の遅延を測定するため、4つのデジタルMEMSマイクを同時にサンプリングする必要があります。STM32L4シリーズ等ではPDMデジタルMEMSマイクを容易に処理可能なDFSDMを搭載していますが、多くのマイコンはそのような機能を搭載していません。汎用性等を考慮し、今回はSPIを用いて実装しました。4つのMEMSマイクをSPIで同時サンプリングする場合、SPIのクロックを4つで共通にして、SPIの1つをマスタ、残りの3つをSPIスレーブとして実装し、DMA転送することで4つのMEMSマイクの同時サンプリングを実現しています。RAMが十分あり、SPIを5つ搭載しているSTM32F411を選定しました。

sds1.jpg

sds2.jpg


 実際にスマートフォンから水の音を出して方向検知するデモ動画を紹介します。




 GCC-PHATアルゴリズム単体に加えて、誤検知をより防止するため、周波数帯を数kHz前後にフィルタし、音の変化が大きい場合(音のアナログ値の標準偏差)にのみ角度出力することで比較的安定して方向検知できるようになりました。一方で手を叩く音やモノを叩く音のような瞬間的な音の場合、音の反射等の影響が大きくなり、誤検知が多くなります。UARTやI2C通信周りの実装を今後行い、コード、回路図含めて公開後、提供開始したいと思います。
posted by Crescent at 00:00| Comment(0) | 電子部品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする