2020年05月23日

電流センサアンプ

今回はコンパレータ内蔵電流センサアンプINA303を紹介します。電流センサアンプはシャント抵抗の微小な電位差を増幅して電圧出力するためのアンプです。電流センサアンプを使用するメリットとしてTIのサイトでも紹介されていますが、下記のようなメリットが挙げられます。

・「小型化、部品点数の削減」
  ディスクリートでシャント抵抗から電流値を電圧に変換するためにはオペアンプや抵抗等の増幅回路が必要です。正負(バイポーラ)で電流検知する場合は正負電源が必要な場合もあります。電流センサアンプを使用するとゲインが固定されている一方でチップ単体で実現できます。また、電流センサアンプは電源電圧範囲を超える入力電圧をシャント抵抗の電圧として入力可能なため、正負電源が不要です。VCC/2を中立の0Aとして、負側の電流もオフセットさせて電圧出力させることができるため、そのままマイコンのADC等で取り込むことが可能です。

・「高精度化」
 オペアンプや抵抗等の増幅回路が削減できるため、部品による差がなくなります。また、電流センサアンプはシャント抵抗の電圧差の増幅に特化しているため、温度ドリフトが少なく、増幅率が高精度に固定されています。

・「設計工数の削減」
 小型化、部品点数の削減により、設計工数の削減が可能です。ハイサイド、ローサイドの電流検知回路によって回路を設計し直す必要もありません。電流センサアンプの多くはハイサイド、ローサイド両方ともそのまま使用することができます。


このように電流センサアンプは非常に便利です。単機能の電流センサアンプはINA181等をよく利用しています。今回、紹介する電流センサアンプINA303はアンプ機能に加えて、コンパレータを内蔵しています。電流を検知する場合、通常の電流変化の他、異常な電流を検知する場合もあります。コンパレータ内蔵の電流センサアンプはそのような場合のニーズを満たすICとなっています。

具体的にはINA303に閾値を入力することで異常な電流(電流センサアンプから見ればシャント抵抗の電圧差)が検知された場合にIOでアラートを出すことができます。また、アラート出力を保持することも可能です。通常、コンパレータを使用しない場合、異常な電流が発生したかどうか、電流センサアンプのアナログ値を高サンプリング周期で監視する必要があります。コンパレータはアナログ回路で構成されているため、高サンプリングな監視と同等です。コンパレータ内蔵電流センサアンプを使用すれば、マイコン側からは高サンプリングで監視する必要がなくなります。異常のアラートIOをマイコンの外部割込みに設定すれば異常があった場合にイベントを走らせることが可能です。サンプリング周期や監視周期を高くできない場合にも異常な電流を取り逃すことなく検知することができます。

コンパレータ内蔵の電流センサアンプはTIから数種類販売されています。中でも2つコンパレータが搭載されているデュアルコンパレータタイプは例えば、正側の過電流、負側の過電流の両方を検出(ウインドウコンパレータ)したり、異常電流と警報電流の2段階で異常を検出(2つの制限超過アラート)のタイプがあります。ウインドウコンパレータと2つの制限超過アラートの違いが分かりづらいと思ったのでINA303のデータシートから違いの図を抜粋してみました。


INA302_INA303_compare.jpg
INA303データシートP.21から抜粋。
左がINA302の2つの制限超過アラートタイプ、右がINA303のウインドウコンパレータタイプです。アラート部分にピンクor赤の色を付けています。

デュアルコンパレータの場合、1つのコンパレータは閾値の超過でアラートを出力しますが、もう片方をどう出力するかで2つのタイプ(制限超過アラートタイプ、ウインドウコンパレータタイプ)があります。正側の電流監視の場合はコンパレータ1つもしくは2つの制限超過アラートタイプが適当です。正負の両側を監視する場合はウインドウコンパレータタイプが適当です。

例えば、DCモータの過電流検知をする場合、正回転、負回転で電流の方向が正負両側の異常電流を検出するため、ウインドウコンパレータタイプが適当です。もし、異常電流だけでなく、警報機能も持たせたい場合はウインドウコンパレータタイプをもう1つ使用して低い閾値を設定することで実現できます。

便利なデュアルコンパレータ搭載の電流センサアンプを評価しやすいように可変抵抗とアラートLED等を実装して電流センサアンプモジュールを設計してみました。

cs.jpg

検証を進めて問題なければ、どこかで販売を開始したいと思います。
posted by Crescent at 00:00| Comment(0) | 電子部品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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