2022年12月17日

プログラマブルデバイスGreenPak

気が付いたら12月に入ってしまいました。今回はプログラマブルデバイスGreenPakを紹介したいと思います。デジタルの論理回路やアナログのコンパレータ、カウンタ、遅延、タイマといった比較的簡易な機能を実現するために特化したデバイスです。1個200円弱で16bit/32bitのマイコンよりも安く実現することが可能です。1個100円前後の8bitマイコンと比べると少し高いですが、アナログ系とデジタル系の簡易な機能が備わっているため、8bitマイコン単体+論理ICやアナログICを組み合わせる場合にはGreenPak1つで代替できる可能性があります。また、マイコンの周辺回路をGreenPakで統合するといったことが可能です。


greenpak.jpg

GreenPakシリーズ内ではAD搭載モデルやロードスイッチ搭載モデル、レギュレータ搭載モデル等、他にも様々ありますが、多くのモデルは製品への組込を目的としており、書き込みが1回のみの焼き切りタイプ(OTP)です。ホビーユースや試作目的では何度も書き換え可能な下記のタイプ(MTP)に制限されます。

 電源電源2コンパレータCNT/DLYLUTSDFF
SLG468242.3-5.51.71-5.5281917
SLG468262.3-5.51.71-5.5481917
SLG470042.4-5.5372018


SLG4682Xは2電源タイプのため、電圧レベル変換ICとしても利用できます。SLG46826のみ温度センサを搭載。SLG47004はオペアンプ、プログラマブルな基準電圧を搭載しています。

開発環境は無料で利用可能な専用のGo Configure Software Hubというソフトウェアを用いて設定します。ノーコードでGUI画面からモジュールを組み合わせて実装します。書き込みは専用のデバッガを介してI2C経由で書き込みを行うことが一般的ですが、昨今の半導体不足でデバッガが長期間在庫なし状況です。デバッガの代替としてArduinoを介して書き込みを行うことが可能です。

ide.jpg

sim.jpg

Go Configure Software Hubは設定の他、信号のシミュレーションもすることが可能なため、書き込み前に意図した信号処理ができているか確認することが可能です。

実際に使ってみると、コンパレータやLUT等の各モジュールで利用可能なポートの制約等ですべてのモジュールをフルに使うことはできないため、実装には工夫は必要であると分かりました。玉に瑕な点として、SLG4682Xは設定データ書き換え時のメモリ削除処理にエラッタがあり、I2Cに準拠しない挙動をします。その対処としてシステム内で書き換えを行う場合、書き換え時I2Cエラー処理が必須である点です。また、設定メモリの書き込みや削除は1ページ16byte単位となっており、1ページ毎に書き換える必要があります。8byteとか1byteとか細かく書き換えできればより便利だと思いました。

デバッガは入手しにくいものの、GreenPakIC自体は半導体不足の環境下でも在庫が豊富なため、今後はGreenPakを使ってちょっとしたデバイスを検討してみたいと思います。
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2022年11月26日

組込系機械学習ライブラリ

今回はマイコン等に組込可能な機械学習ライブラリを調査してみました。マイコン等の組込系で使用するため、C/C++で利用可能な代表的なライブラリの特徴を調べてみました。

 最も良く使用される組込系機械学習ライブラリです。ただ、組込系の場合、ARMのライブラリと依存関係があるため、ARM以外のPICやAVRといったCPUではそのままでは利用できません。RISCV等をターゲットにしたARM以外に実装した例もありますが、ライブラリが非常に大きく、ポーティングに難ありなようです。

 STM32マイコンに実装する場合にCubeMXと統合されたUIで利用できる機械学習ライブラリです。KerasやTensorFlow等の学習結果を簡単に組み込むことが可能です。また、学習結果の圧縮やテスト等が容易にできるため、STM32マイコンであれば非常に便利です。一方でSTM32マイコン以外では使用できなく、昨今の半導体不足の影響をモロに受けているため、当面は安定した入手が難しい可能性があります。

 scikit-learnもしくはKerasの学習結果をC/C++に変換することができます。Pythonで学習結果を読み込ませると自動的にC言語でヘッダーファイルが生成され、そのままマイコンのプロジェクトソースに組み込むことが可能です。1つのヘッダーファイルをプロジェクトソースに組み込むだけて利用できるため、他のライブラリのように複数のソースコードをプロジェクトに追加する必要もなく、非常に簡単に組み込むことが可能です。また、ライブラリ自体非常に軽量なため、小規模なモデルであれば8ビットマイコン等にも組込可能です。ただし、利用可能なモデルに制約があります。

ELL
 マイクロソフトが提供する組込向けの機械学習ライブラリです。主にC++で実装されています。組込向けといってもマイコン等ではなく、raspberry piといったSBC等をターゲットにしているようです。ここ数年の開発ペースは落ちているようです。

その他

DLib
FANN

 実際にSTM32 Cube AI、Tensorflow Lite、emlearnを使ってみました。印象として、ターゲットとなるマイコンでサンプルがあれば、Tensorflow Liteはネット上に情報が多く、利用しやすいと思いました。初心者でも簡単に効率よく、推論結果を評価したりできる点ではSTM32 Cube AIがお勧めです。また、利用可能な機械学習モデルに制約があるものの、どのようなマイコンにも簡単に組み込むことができ、C言語で移植性が高いという面ではemlearnがお勧めでです。個人的にはSTM32、RP2040、PIC32マイコン等の様々な環境で利用することを想定し、今後はemlearnをより使ってみたいと思いました。
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2022年11月12日

BLE5モジュールV2

プログラミングなしで簡易なコマンドを用いてBLE通信をすることが可能なモジュールがSilicon Labs社からWireless Xpress BGX13シリーズとして2018年から提供されていました。しかしながら先日、2022年8月に生産完了予定(生産終了は2023年3月予定)が発表されました。

BGX13シリーズは発売から4年程度経過しており、生産完了もやむを得ずという状況ですが、BGX13シリーズの上位として発売されたBGX220シリーズは2021年に発表されてから1年ほどでBGX13シリーズと一緒に生産終了となりました。WiFiモジュールでも生産完了になっており、方針変更で無線系のXpressシリーズから撤退となったようです。上位版のBGX220シリーズも生産完了となり、後継機種も販売されないことから既存のユーザに対する影響を考慮し、BGXシリーズについてはLaird社からLyraシリーズとしてBGXシリーズと同じハードウェアとXpressファームウェアが提供されることが分かりました。今回はBGXシリーズとLyraシリーズの違いについて調査した結果(アンテナ内蔵Pシリーズを対象)を紹介したいと思います。

BGXシリーズとLyraシリーズの違いについてはLyraシリーズの公式サイトにBluetooth Xpress (BGX) Migration Guideとして公開されています。詳細はそちらを参考にしてください。

lyra.jpg

■ハードウェア
ハードウェアとしてフットプリントは同じため、そのまま同じフットプリントとして利用できます。一方、ピンアサインはBGXシリーズとLyraシリーズで互換性がありません。LyraシリーズのピンアサインはBGX220に合わせたようで、BOOTピンが異なります。BGX13とはBOOTピンの他、電源やUARTのピンも異なります。

電源電圧については1.8V~3.3Vとなっており、最低2.4VのBGX13よりもより低電圧で動作できる仕様となっています。

■ソフトウェア
ソフトウェアについては互換性有ということのようです。ただ、BGXシリーズでは出荷時から既にXpressファームウェアが書き込まれた状態でしたが、Lyraシリーズは出荷時にXpressファームウェアは書き込まれておらず、ユーザ側で公開されているXpressファームウェアを書き込む必要があります。

ファームウェアはBOOTピンをGNDにした状態で電源投入させることでUARTから書き込むことが可能です。Github上でWindowsのコマンドラインからシリアルUARTを介してファームを書き込むための書き込みツールuart_dfu.exeが公開されています。uart_dfu.exeはUART-DFU_XXX-XXXXX.zipとして圧縮ファイルとして提供されています。

コマンドライン上から例えば下記のようにコマンドを実行するとファーム書き込みが可能です。

uart_dfu.exe COM8 115200 LYRA-P_Bluetooth_Xpress_UART.gbl

実際にファーム書き込みした際に分かった点として、書き込みツールuart_dfu.exeはUSBシリアル変換のGND, TX, RXの他にCTS、RTSの配線も必要な点です。通常のマイコンとの通信等ではGND, TX, RXだけでも十分ですが、uart_dfu.exeの書き込みツールはCTS、RTSの信号変化も確認しているようで手持ちのGND, TX, RXだけのUSBシリアル変換アダプタでは動作しませんでした。GND, TX, RXの他にCTS、RTS端子も備えた別のUSBシリアル変換アダプタを使用するとすんなり書き込むことができました。

Wireless XpressシリーズはUARTシリアルで設定変更できるため、プロトコル実装なしでマイコン側のファーム書き換えのみで様々な機能を実現できるというのは非常に魅力的です。BGXシリーズは生産完了になったものの、Laird社からLyraシリーズとして今後もある程度入手できるようで安心しました。
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2022年10月29日

Webシリアルプロッター

以前にWebシリアルAPIとUSBシリアルI2C変換基板を用いてI2Cデバイスをブラウザから制御、取得したデータからChart.jsで可視化するデモツールを紹介しました。今回はUSBシリアルI2C変換基板に限らず、ArduinoやRP2040等のUSBシリアル通信のデータをグラフとして可視化するシリアルプロットツールを実装してみました。ツールはこちらから利用できます。

例えばセンサデータ等を下記のようなフォーマットでUSBシリアル通信から出力させると最大8つのカンマ区切りのセンサデータをグラフに可視化できます。

XX.XX,YY.YY,ZZ.ZZ,\r\n
XX.XX,YY.YY,ZZ.ZZ,\r\n
XX.XX,YY.YY,ZZ.ZZ,\r\n
XX.XX,YY.YY,ZZ.ZZ,\r\n
※X,Y,Zは各センサ数値文字列


実際に2つの適当なデータを可視化してみました。

SerialPlotter.jpg

ボーレート設定の他、csvとしてダウンロードする機能、グラフをクリアする機能を実装してみました。ArduinoのIDEのシリアルプロッタ機能のように簡単にシリアル通信のデータを可視化することが可能です。WebシリアルAPIを使用しているため、ソフトのインストールなしでWebブラウザ(Edge、Chromeのみ対応)から本ツールにアクセスするだけで簡単に利用できます。また、ブラウザ単体とChart.jsライブラリで実現できるため、一度、ページを読み込んで表示すればオフライン環境でも動作可能です。なお、WebシリアルAPIの部分等のjsコードやcss含めてすべてhtml内に記述しているため、本ツールにアクセスして右クリックで「ページのソース表示」でソースを確認することができます。今後は他にも応用的な機能を実装したいと思います。
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2022年10月15日

USBカメラ変換基板 白黒ビットマップ保存モード

今回はUSBカメラ変換基板に追加した新機能について紹介したいと思います。

ちょっとした機械学習等で画像データを利用する場合、データ処理を軽くするため、2値化した画像を用いることが多くあります。実際に160x120のビットマップ画像を保存すると16ビットカラーで1ファイル37.5kB程度となります。一方、同じ160x120のビットマップ画像でも白黒ビットマップの場合、1ファイル2.4kBと1/10以下にファイル容量自体も減らすことができます。

そのような用途にも容易に導入できるようにUSBカメラ変換基板側で白黒ビットマップの保存ができる機能を追加してみました。機能としてはUSBカメラで取得したカラービットマップ画像を大津の2値化を用いて閾値を求め、白黒ビットマップに変換し、SDカード等に保存できる機能です。


実際に白黒ビットマップ保存機能を実装して取得したイメージを紹介したいと思います。

221004_191332_0.bmp

160x120のカラービットマップ画像


221004_191342_0.bmp

白黒モード有効時に160x120の白黒ビットマップ画像

光の反射や陰の部分等、2値化によって少しカラー画像と比べて変化している部分がありますが、大津の2値化として上手く働いており、概ね意図した白黒変換ができていることが確認できました。今回追加した白黒ビットマップ保存の新機能はgithub上のv1.1.0以降のファームウェアにSDカードを用いてアップデートすることで利用可能です。なお、白黒ビットマップ保存はデフォルトでは無効化されています。monコマンドで白黒ビットマップ保存を有効化した場合でも電源再投入やリセット等で設定が無効化されるため、利用する場合は再度、有効化する必要があります。今後も機会を見つけてUSBカメラ変換基板の応用例や機能等紹介したいと思います。
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